採択ビジネスプラン

ことばの障害スタイリスト事業





「早坂吃音治療・相談室」を主宰する早坂菊子さんが解決しようとする社会課題は、日本全国で100‐120万人は存在すると言われている吃音にともなう諸問題である。言語障害の中でも軽度の障害とされ、それゆえ歴史的にみて十分な研究が行われておらず、吃音治療のスペシャリストも非常に少ない。吃音に対する社会の理解が極めて乏しいことから、吃音児は偏見や差別に晒され、自己を肯定できないまま内向化や引きこもりの状態になってしまうことが多い。また、吃音を持ったまま成長した場合には、就労上さまざまな問題が発生する。しかし現状では、吃音児や成人吃音者の問題に対応できる専門家が不足しており、また彼らを支援する団体も地域にはない。早坂さんの事業は、吃音児の心身発達上の問題、成人吃音者の就労上の問題を解決し、さらには社会全体におけるこの軽度障害の理解を深めていくことで、吃音者が彼らなりのコミュニケーションのスタイルを発見・確立し、彼らが差別されずに就労できる社会に貢献することを目的としている。





早坂さんの事業は大きくは2つに分類される。1つ目のグループには、吃音者自身を中心に吃音や言葉に興味のある人たちに働きかける活動が含まれる。2つ目のグループには早坂さんのような吃音スペシャリストの養成事業、およびセミナー・シンポジウム・講演会を通じた吃音啓発が含まれる。

1つ目のグループは3つの活動に分けることができる。1つ目の「ことばカフェ」は、吃音に限定せず広く「ことば」に興味のある人々のための会費制のサロンとして2011年6月からスタート。10月まで毎月開催され、のべ29名の方が参加している。上述の社会課題の解決にあたってのここでの目的は、言葉に対する偏見や先入観を取り除き、ことばの多様性と個性を認識してもらうことにある。2つ目の「アート・コミュニケーション教室」は、国分寺市で障がい児・障がい者対象のアート活動を行なってきたNPO法人 アート多摩と協同で開催した講演会で、吃音児・吃音者にことば・コミュニケーションの楽しさを体感してもらい、自分のスタイルへの興味・感心を喚起することを目的としている。3つ目の「治療・相談室」では吃音児・吃音者たちと直接向き合い、自分なりのことば・コミュニケーションのスタイルを発見・確立を目指した相談と治療を実施している。入会金3万円、治療・相談料5000円のシステムで、2011年11月現在でのべ8名の来室者があった。

2つ目のグループは、スペシャリスト養成と啓発活動に大きく分けることができる。スペシャリスト養成講座の対象者としては、1つ目のグループに含まれる個人へのアプローチができる言葉の障害スペシャリストを養成するもので、講座の対象者としては、もともと言語障害スペシャリストを目指していた人(言語聴覚士も含む)だけではなく、企業の人事担当者やコミュニケーションの問題一般に興味のある人も含む。将来的には受講料を基礎コース10回が3万円、応用コース10回が5万円、臨床コース1回が2000円で設定することを検討している。吃音に関する問題の啓蒙は、シンポジウムでの発表や、セミナー・講演会での登壇を通じて随時行なっていく。直近の実績としては、前述のアート多摩との連携のもと、2011年10月23日に多摩市関戸公民館にて、言語障がい児(者)に関する基礎知識の啓蒙と、ニーズの確認を目的にセミナー・シンポジウムが行われている。

これらコア事業に加え、吃音問題の啓蒙および治療・相談室のPRを目的としたDVDを制作し、吃音を専門とする言語聴覚士育成機関などに販売することを考えている。同様のDVDとして朝日新聞に取り上げられた「ただ、そばにいる」があるが、このDVDが話題になったということは、吃音をテーマにしたDVDに一定の市場性があるということではないか、と早坂さんは考えている。



早坂さんは、言語障害の研究者として長年教育・研究・臨床の現場で培ってきた知識や知見を軸にしつつも、より言語障害者個人々々の体験や知恵などを幅広く考慮した多角的な治療こそ重要だと思い至ったことから起業を決めた。多角的な治療法をもってすれば言語障がい者に寄り添う社会を作り出し、またより効果的な専門家育成にも繋げられると早坂さんは考え、吃音者を中心として言語障がい者をサポートすることで彼らの幸せに少しでも貢献することを強く望んでいる。iSB公共未来塾に対しては、国の助成があることでハンディキャップを持った方たちが高額の治療費を払わずとも有効な治療を受けられることにもつながるので、ぜひ今後も継続してもらいたいと期待している。長年大学で教鞭を取っていた早坂さんだが、研究のための仕事ではなく、目の前にいる実際に困っている人たちのために力を尽くせることに、つまりは論文を書いて10年後の世界を変えるのではなく、今を変えていける社会起業家としての仕事に、新しい手応えを感じている。




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