採択ビジネスプラン

上山棚田大学




現状、住まいを選ぶにあたって不動産情報サイトから得られる情報は、家賃、間取り、面積、築年数、駅からの距離、建物のタイプなど、いわゆる「ス ペック」としての無機質の情報しかなかった。しかし実際には、安心して預けられる保育施設が徒歩圏内にあるか、必要な介護サービスが受けられる地域である か、そして犯罪の少ない安全な地域であるか、といった住宅を取り巻く環境についての情報が求められてきている。こういった「住宅ではなく街を選んでもら う」という姿勢で、生活関連サービス情報を包括的に分かりやすく比較できる情報源は現状存在せず、該当する情報そのものが行政のデータベース上に存在する 場合であっても、それは常時公開されているものではないので、市民の側から開示請求するという手間がかかってしまう。

上述の問題を解決するため、井筒さんと共同起案者の東大史さんは岡山県美作市上山地区に、中山間地で先人からの知恵を直接学べるプラットフォームで ある「上山棚田大学」を設立した。この大学は「農山村で持続可能な暮らしをするための修行の場所」と位置づけられ、スタディツアーの参加者は、耕作放棄地 を開墾して自給自足の作物作りをしたり、古民家を改築して自分たちが住める場所にしたり、野焼きを実践したりできる。
都市部(このモデルでは主に関西圏)では近年、農業や林業に憧れる若者の数が増加しており、彼らが上山棚田大学で農山村での暮らしに必要な技能や住民自治の仕組みを段階的に学ぶことで、二拠点居住や定住人口の増加が見込める。

都市部(主に関西圏)のファン層を確立するためには、宝塚市や尼崎市など関西圏の協力者と連携してWebやチラシなどの媒体を使って活動を告知するとともに、セミナー形式の慈善イベントを実施し、スタディツアーへの参加を促進している。

この事業モデルの最終目的は上山地域のファン層を拡大し、同地区で生産された作物等の経済価値を向上させることにある。消費者(都市住民)が組合費 /会費を前払いし、これを休耕田や耕作放棄地の開墾費用や新規就農者の支援にあてることで、都市と農山村が食料供給に関するリスクを共有する仕組み (CSA = Community Supported Agriculture)が構築できる。両者(都市と農山村、または消費者と生産者)がリスクを共有することは、両者の間での信頼性・関係性を強化できる と共に、相互が安心して農作物等を生産したり、食を楽しんだりできる環境に寄与する。

さらにこの事業では、棚田に代表される中山間地の景観も再生・保全できる。また、住民自治のノウハウを田舎で暮らすための正業として可視化し、他の多くの土地に若者が入っていく契機ともなる。

元々は都市部で自然エネルギー系のコンサルタントを勤めていた井筒さんは、計画だけを立てて実践には関わらないコンサルタント業に物足りなさを感 じ、さらにはブルーカラー的な仕事を軽んじる傾向が強い若い世代が、実際には経営感覚やコミュニケーションスキルを要する農林業をも単なる作業労働だと誤 認識し、その結果農林業の担い手が不足し、耕作放棄地や放棄山林が増加していることにも危機感を感じていた。共同起案者の東さんも最近まで首都圏で森林保 全のための活動をしていたが、東京都との関係や法律で自由に動けないことにジレンマを感じていた。出会いのキッカケはソーシャルメディアだったという二人 が、やりたいことを自由に実践できる場が美作市上山地区である。二人は、自分たち自身がモデルになって農業や林業の魅力を表現することで、働きたいけど仕 事がないと悩む若者が「楽しそうだな」というモチベーションで農林業に一歩足を踏み入れるようになればいいと考えている。また、農業や林業もできる、IT やデザインも自分たちでできる、という多機能な仕事人(東さんはこれを「百姓」ならぬ「百商」「百匠」「百笑」と呼ぶ)を増やしたいとも語ってくれた。




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