株式会社地域協働推進機構 地域経営部ディレクター和田裕平は、国土交通省平成25年度国土政策関係研究支援事業に「地域づくり活動の事業効果測定方法及び政策への導入可能性に関する研究-SROIを対象として-」を申請し、採択されました。
参考:平成 25 年度国土政策関係研究支援事業の研究課題の選考結果
http://www.mlit.go.jp/kokudoseisaku/kokudoseisaku_fr1_000009.html
「地域づくり活動の事業効果測定方法及び政策への導入可能性に関する研究- SROI を対象として-」
近年、まちづくりや観光振興等の地域づくり活動で、自治会、商店街等の地域団体、ボランティア団体等の他に、「社会性と事業性」を両立させる価値・行動パターンを持つ社会的企業や事業型 NPO、エリアマネジメン ト組織等が活躍しはじめている。
特に、衰退が続く地方では、公的支援ばかりに頼るのではなく、自主財源を確 保して事業収入をベースとした自立的経営により地域の再生につなげようとする若者等が魅力的な取り組みを 展開している。
今後、人口減少、高齢化による財政制約が強まり、また都市縮退に伴い多様な地域課題の発生が見通さ れる中で、社会的企業等の活躍を後押しすることは、地域課題を解決する主体としての役割だけでなく、地域 経済を牽引し、雇用を確保する面においても大きな意義を持つと考える。
しかしながら、社会的企業等の現状を見ると、地域の中でなかなか確たる地位を確立できず、特に自治体が 実施する地域課題解決型事業(公共サービス)を引き受けるまでには至っていない。これは、社会的企業等 が自治体・地域等と異なる行動様式のため理解が得られにくい、既存組織等が実施している事業と競合するた め参入障壁が高い、経営基盤が弱く経営面の信用が得られにくい等の要因にあり、これらに共通するボトルネッ クは、社会的企業等が取り組む事業の内容や効果が明確に理解・共感されていないため、「何をやっているかわ からない」と不安感を持たれているためと考える。
このような状況を改善するためには、社会的企業等の信頼獲 得をサポートする事業効果の定量的な測定方法を開発することが必要である。
一方、欧米では、多様な公共サービスへの社会的事業の導入 を促進するために、 効果測定手法が開発、 導入されてきており、特に、イギリスでは社会的企業の更なる活躍を促進するために SROI(費用対社会的効 果 :social return on investment)の導入が検討され、投資可能性を測る指標として注目が高まってい る。さらに、 SROI を活用した SIB(ソーシャルインパクト債券: social impact bond)を発行し、資金調達 に繋げている実績も出てきている。
( SIB とは、資金調達方法の一つ。事業による社会的価値向上に基づき行 政との契約で得られた対価を配当する仕組み。)
そこで、本研究では、地域づくり活動の経済的な効果測定手法( SROI)を開発するともに、SROIが高い 事業の自治体業務の導入や SIB を活用した資金調達の可能性を明らかにし、社会的企業等が取り組む地 域課題解決型事業の普及の可能性についても検証する。
本研究の特徴は、
i)地域づくり分野での簡便な事業効果測定手法の開発
ii)その測定ツールを開発 することで、社会的企業等が独自に測定、活用できること
iii)SROI を活用し、効果的な( SROI の高い) 地域課題解決型事業を広く社会に普及させる具体的方法を検討すること
にあ り、学術的な研究のみならず、広く社会的企業等も活用可能な事業効果測定方法として導入させるための実質的な研究を行うことを目指す。